カテゴリー別アーカイブ: 大学と教育について

週刊文春に天下りを報じられた目白学園による弁明

週刊文春2月16日号で天下りを報じられた目白学園が、自校ウェブサイトにて報道を否定するコメントを公開しました。

週刊文春(2017年2月16日号)の記事について

目白学園の学生・生徒、保護者、卒業生、教職員など関係者の皆様へ

本日2月9日発売の『週刊文春』(2017年2月16日号)に「早稲田だけじゃない/違法天下りの植民地となった私大」のタイトルで目白学園についての記事(1頁弱)が掲載されましたが、本学園では記事タイトルにあるような「違法天下り」の事実は全くありません。同誌の取材には、文書を含め誠実に回答してまいりましたが、事実を誤解させるような書きぶりが随所に見られます。しかし、事情が明らかでないまま不安を抱かれることもあるかと思われますので、取り急ぎ記事の論点に沿ってご説明いたします。

第一に、同記事中で「学校関係者が憤る」として「わずかの間に六人ですよ!文科省の元キャリア官僚が理事長になってから”身内”を次々と全国から呼び寄せたのです。」と書かれています。しかし、この人数は同時に在籍したものではなく、このうち現在本学園に在籍しているものは4人で、2人は既に退職しています。
このように複数の文部科学省経験者が在籍するに至ったのは、記事に「創業家理事長の不祥事で経営が混乱し、建て直しのため理事長についたのが、遠縁に当たる旧文部省体育局長の逸見博昌氏」とあるように、逸見氏は、辞任せざるを得なくなった創業家理事長自らの強い要請を受けて学園の理事長に就任しました。その際、創業家理事長を支えていた主要な役職員六人が次々と学園を去った状況であったため、学園の混乱を乗り切り、学園の運営を切れ目なく行うためのいわば臨時的対応としてこのような人事を行ったものです。
記事後半で私が、当時の状況を「”助さん格さん”がいないと仕事ができませんからね。今問題となっている天下りとは全く違いますよ」と述べたとされているのは、当時の逸見理事長等がそれぞれの方の人物、識見を見極め、本学園に必要な方との認識の下に直接ご本人に本学園への就任を要請して実現したもので、新聞報道等で伝えられる文部科学省の関与や文部省人事課OBの脱法的斡旋などは一切なかったことを述べたものです。
なお、私について元大臣官房審議官とされていますが、逸見理事長が私への就任を要請された理由は、私の前職が国立教育政策研究所長で、教育政策の研究を総括する仕事をしており、傍ら東京大学教育学部などで講師を務め、教育法に関する書籍も著しています。こうした教育面での経歴を評価していただいて逸見理事長から学園の専務理事への就任を要請されたと聞いており、逸見理事長の辞任に伴い理事会の審議を経て理事長に就任しております。
なお、このような経緯から、「文春」への回答で、文科省経験者の人数について、今後減少する方向にあることを述べたにもかかわらずそこは無視され、文書回答で「複数のプロパー職員が評議員の一翼を担うなど、その登用態勢は進行中であり、プロパー職員が執行部から排除されているわけでは決してない」と述べたにもかかわらず、記事では「プロパー職員が駄目というわけではない」などと誤解を生む記述になっているのは残念です。
また、記事では、逸見理事長が文科省の「元キャリア官僚」であることが強調され、かつ創業家の「遠縁」と書かれていますが、同氏は、昭和五十四年まで本学園の理事長を務められた床次徳二氏の娘婿であり、平成六年から理事長就任の平成二十三年まで、十七年間にわたって本学園の理事を務められた「創業者一族」です。

第二に、記事では「中には旧文部省で大学・大学院担当を十数年務め、まさに所管である目白大学に幹部職員として天下りしたツワモノもいる」と述べています。これは現在の大学事務局長を指しているものと思われます。しかし、同氏が文科省で目白学園のような「私学」を担当する部局に在籍したことはなく、文科省で「国立大学・大学院担当」を務めたのは、本学園に採用された2012年の十二年前の2001年までです。同氏は、その後は他の業務に就き、本学園に採用される直前は国立大学法人群馬大学理事・事務局長でした。同氏は、国立大学関連業務を離れて十数年後に、一貫して目白学園に全く係わりのない業務を経て本学園に採用されたものです。このことも面談取材、文書取材への回答でも述べましたが、記事では何の説明もないまま無視をしています。

第三に、「この人物の人事発令書はなんと文科省在職期間中にもかかわらず、理事長名で正式に出されていた」と述べられていますが、その経緯は下記のとおりです。
同氏は前述のとおり、2012年3月に国立大学法人を退職し、1か月後の5月に本学園岩槻キャンパス担当事務局長に採用されましたが、3月の時点で学内のスタッフネットに「5月1日付けで就任」のお知らせが掲載されました。この当時の責任者であった専務理事(現在は退職)に事情を確認したところ、「学内の事務を円滑に進める意図で、本人の承諾前(承諾を得たのは国家公務員退職後の4月6日)であったが、あくまで『予定通告』の意味で掲載した。現時点で考えれば、本人にも迷惑をかけたことになり適切ではなかった」とのことでした。事務局長に確認したところでは、「専務理事から事前の打診はあったが、国家公務員法の規定があるので、在職中は承諾回答できない」旨を伝えていたとのことでした。
このように、本人の承諾なく「予定人事」を本人の退職前に掲示したことは、当時の学園側の対応に不適切な点があり、そのことを文書取材に対する回答で述べたものです。目白学園側の事務に不適切な点があったことは否めませんが、本人は承知していないことであり違法といえるものではありません。

第四に、「文科省出身者の役員は週三~四日勤務で、少なくても一千万円以上を受け取っているとみられます(前出・学校関係者)」とありますが、この点も取材で説明したにもかかわらず、「学校関係者」なる者の発言のみが極めて恣意的に述べられています。
本学園では、前出の逸見理事長の就任以後、常勤の理事・理事長の勤務日数を3~4日に調整し(実際は、会議や諸行事で4~5日出勤することも珍しくない)、その状況に応じて報酬を減額する方式を新たに取り入れました。この減額した資金は「特別教育充実支援事業費」として学園の予算に計上し、年度途中で新たに生じた教育・研究活動に機動的に対応する資金としてきました。これまでも、国家試験合格率を大きく向上させた学科への援助、課外活動で好成績をあげたクラブの褒賞、学年途中での資格取得奨学金制度の発足資金などに充てられています。この措置で減額した後の報酬は役員によって出勤日数が異なるため一律ではありませんが、一千万円を超える者も下回る者もおり、2人の常務理事の報酬は同世代の本学園の大学教授の平均的な額を下回るものになっています。

第五に、「現在は運営に関与していない」という「創業家の一人も懸念する」発言として「私たちは私学の自主独立を尊重する気風を大切にしたので学園の経営に政治家や政府高官を関与させることは避けてきました」と述べたことが書かれています。
まず事実関係として、不祥事で辞任された当時の「創業家理事長」は、現在「学事顧問」として、学園から報酬を得るとともに学内に専用執務室を持ち、学長の教学上の諮問に応える役職にあります。また本学園を代表して日本私立短期大学協会に参加しておられます。
また、「創業家理事長」が理事長・大学学長・短大学長(当時は一人で主要な三役職を兼務していた。現在は、理事長、大学学長、短大学長はそれぞれ専任者が就任)の当時にも同理事長が招聘した文部省(当時)出身の役員が在籍していました。また、同氏が理事長になる前の時代の理事長は、国務大臣も務めた自由民主党の国会議員であった方(創業家一族)が16年にわたって就任して、本学園が財政的に厳しかった時代を乗り切っています。
与野党の政治家が私学経営に係わる例は他にもあり、少なくとも創業家の一人の方が述べたとされることは明らかに事実に反しております。また、私が理事長でいる間は政治家に本学園の経営に関与していただくつもりは全くないことを申し上げておきます。

新聞報道によれば、いわゆる天下り問題に対して文部科学省の調査が行われているとのことであり、いずれその中で明らかにされると思われますが、取り急ぎ現時点における理事長としての見解及び前後の事情を述べました。
本学園では、大学、短大、高・中学校の各校で、新学部、新学科の設置などを含む大改革に両学長、校長を先頭に取り組んでおり、新生目白学園をめざして努力が傾注されているところです。今後とも本学園を温かくお見守りいただき、ご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2017年2月9日

学校法人目白学園
理事長 尾﨑 春樹

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「職業人養成大学」の新設に関する一提言 ~高等学校後期課程の新設~

現在、文部科学省は、学識経験者らを集めたプロジェクトチーム「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会」を組織し、大学に準じる新たな高等教育機関の制度化を検討しています。
当該の教育機関は名称未定の段階であるため、以下では「職業人養成大学」と記述します。

実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会(文科省HP)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo13/index.htm

「職業人養成大学」の概要

上記の特別部会はすでに17回(2016年5月25日時点)が開催され、この時点で話し合われている「職業人養成大学」の概要は以下のとおりです。

修業年限
◎ 2・3年制及び4年制の複数の修業年限を制度化。
◎ 4年制課程については、前期・後期の区分制課程も導入。

教育内容・方法
《実践的な職業教育のためのカリキュラム》
◎ 分野の特性に応じ、卒業単位のおおむね3~4割程度以上は、実習等(又は演習及び実習等)の科目を修得。
◎ 分野の特性に応じ、適切な指導体制が確保された企業内実習等を、2年間で300時間以上、4年間で600時間以上履修。
《産業界・地域等のニーズの反映》
◎ 産業界・地域の関係機関との連携により、教育課程を編成・実施する体制を機関内に整備
《社会人等が学びやすい仕組み》
◎ 社会人等をパートタイム学生や科目等履修生として積極的に受け入れる仕組みや、短期の学修成果を積み上げ、学位取得につなげる仕組みを整備。

学位
◎ 実践的な職業教育の成果を徴表するものとして相応しい学位名称を設定。
※ 学位の種類としては、大学・短大と同様、「学士」及び「短期大学士」の学位を授与することが適当。
※ 現行の大学・短大の学位には、専攻分野の名称を付記するものとされているが、新たな機関では、当該専攻分野の名称として、学問分野よりも、産業・職業分野の名称を付記することや、専攻分野に加え、「専門職業」、「専門職」などの字句を併せ付し、専門職業人養成のための課程 を修了したことを明確にすること等が適当
⇒ 「法務博士」のような有名無実の学位になりかねません!

名称
◎ 例えば、4年制は、「専門職業大学」、「専門職大学」など2・3年制は、「専門職業短期大学」、「専門職短期大学」など。

「職業人養成大学」に反対する3つの理由

小生は以前のブログエントリーにて、「職業人養成大学」に反対する理由を3点述べました。

1. 「専門職なら食べていける」という勘違いが前提の教育政策
2. そもそも「専門的職業」とは何なのかが明示されていない
3. 理系単科大学並みの高コスト体質になる

政府肝いりの『職業人養成大学?』がコケそうなワケ
https://shokuinblog.com/edu/politics/835/

ポイントを要約します。まず、「専門職なら食べていける」という勘違いについては、介護職や保育士を例にとれば分かりやすいと思いますが、雇い主を必要とする専門職は非常に立場が弱い、ということです。一度は就職したとしても、低賃金・重労働のため、その職業に長く定着することができません。
2つ目の問題は、そもそも「専門的職業」とは何なのかが漠然としたまま議論が進められており、いわゆる「ジェネラリスト」と何が違うのかが全く分からないということです。
3つ目の問題は、「職業人養成大学」がかなりの高コスト体質になるだろうという点です。人件費のかかる実習科目が中心となることに加え、大学のような教養科目も置かなくてはなりません。法科大学院の募集停止が相次いでいるように、私立学校は採算が取れないと知るやいなや、即座に撤退していきます。

職業人養成教育は高等学校の後期課程として新設するべきだ(提言)

2016年1月20日に開催された特別部会(第9回)で、委員の益戸正樹氏から次の発言がありました。この方はバークレーズ銀行の日本支社幹部です。

私は,1980年から85年まで,都市銀行の人事部で採用担当の経験があります。当時,高校から大学,短期大学への進学率が高まり始め,優秀な高卒の方の採用が難しくなり始めた頃です。「特に中小企業・リテール業務でリーダーシップ」を発揮していた中堅マネージメント候補者となる男子高卒者のレベルを維持した採用は難しく,銀行界ではいち早く採用中止を決定しました。

これに対して、佐藤東洋士氏からも、次の発言がありました。この方は桜美林大学の総長です。

先ほど益戸委員が1984年に銀行が高卒の生徒を採らなくなったというようなお話がありました。それまでのことを考えると,高等学校もいわゆる商業高校や農業高校,工業高校はかなり良い人材を産業界に出すというような役割がありました。

さて、小生も金融に10年ほど勤めておりましたが、当時も一般職に関しては高卒者の採用が残っていたように記憶していますし、1980年代頃までは当たり前のように女子高卒者を採用していました。
その時代、大手企業がどのように高卒者を採用していたかというと、学区トップ校に学校推薦枠というものがあったのです。女子の大学進学率が低い時代でしたから、成績優秀な女子学生は高卒で一流企業へと就職していきました。この時代に入社した女性の中から、大企業で役員まで昇格する人が近年相次いでいます。
佐藤東洋士氏の言うように、もともと日本の高校には良い人材を社会に送り出す能力があります。いまも工業高校などではその伝統が残っており、大卒者がなかなか入れないような有名企業にも、技術職として卒業生を送り出しています。

この30年で日本はすっかり大卒者中心の世の中になりましたが、教育水準が向上したというよりも、学歴社会をより強固にしたという負の側面の方が大きいでしょう。
いまここで重要なことは、「大卒か否かという二元論が支配する世の中を正していかなければならない」ということです。
学歴が「人生の特急券」になるような社会は、少ない勝者と多くの敗者を作るばかりか、大学教育の質をも落とします。学歴社会は大学にとっても望ましくはないのです。

学歴社会にブレーキをかけつつ、勤勉な若者がしっかりと評価される世の中を作る。そのために、以下のプランを提言したいと思います。

「職業人養成大学」の制度化に反対したうえで、これに相当する教育機関を高等学校の「後期課程」として位置づける。そして、2019年度から導入が予定される「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の成績優秀者に当該後期課程への進学を認める。

以上

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大学職員とプロ意識に関する考察

大学職員はもちろん、会社勤めの方であれば、職場や研修会などの場で、一度ならず「プロ意識を持て」と言われたことがあるかと思います。
「プロ意識を持つ」という言葉を、我々は当たり前のことのように受け止めてしまいがちですが、どうも本来の「プロフェッショナル」とは全く別の意味で喧伝されているのではないか、そのようなことを私は以前から考えてきました。
そこで今回は、プロ意識とは何かという点について大学職員の視点から考察を加えてみたいと思います。

さっそくですが、「プロ意識」という言葉から、どのような意味を想像するでしょうか。私自身のイメージですと、正確さや精密さ、完璧さ、責任感、全力投球などを連想します。「お金をもらったらプロ」と言う人もいますね。だいたいそんなところかと思います。
サラリーマンであれ大学職員であれ、特に事務作業は正確でなければなりませんし、当然のこと責任感が無ければ信用を得られません。
「お金をもらったらプロ」というのは義理人情的な解釈のような気もしますが、法律的にもお金を受け取ると(受け取らない場合よりも)責任が増すので、まあ良しとしましょう。

そういうわけで、仕事において「プロ意識」を持つことは必要だと思うのですが、はたして責任感を持って全力投球で正確に仕事をこなしていれば「プロ」として合格なのでしょうか。そのような意味での「プロ意識」を持って働いていれば、組織としても望ましい結果を得られるのでしょうか。
それはちょっと安直ではないかと思います。いまや春に苗を植えれば秋に米が売れるというような時代ではないのですから、いくら真面目に汗をかいたとしても、先々の見通しが悪ければ、まったく商売になりません。
上記のような意味での「プロ意識」というのはスローガンとして低次元であると思いますし、事業の下降局面では下り坂を全力で駆け下りるような結果にもつながりかねません。

少し脱線しますがお許し下さい。「業務スーパー」というスーパーマーケットをご存知でしょうか。他店とは異なる品揃えで、とにかく安値、飾り気の無い店内が特徴で、お店のキャッチフレーズには「プロの品質とプロの価格」を掲げています。本部は関西ですが関東にも進出しているので、実際に利用したことのある方もいらっしゃるかもしれません。
上述のとおり、業務スーパーでは「プロ」の定義として「品質」と「価格」を掲げています。品質だけではプロとは言えない、価格だけでもプロとは言えない。品質と価格のバランスをとってこそ商売を成功に導く、そうしたプロ論を端的に現したキャッチフレーズであろうと思います。

一方で大学業界におけるプロ論とは何かと考えるに、そもそも大学をひと括りにはできないという問題があります。東京大学におけるプロ論と、地方私立大学におけるプロ論とでは、目指すべき成功モデルが全く違ってくる。それぞれの成功モデルに応じたプロ論があるのではないかと思います。言うまでもなく大学のビジョンと密接に関わるものでありましょう。
低い次元でプロ意識を語ってしまうと、本当に大切な、自らの事業を成功に導くという本来の「プロフェッショナル」を見失ってしまう、成功へのビジョニングこそがプロフェッショナルの原点ではないか、そういうことを考えています。

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教育学部におけるゼロ免課程の成り立ちと現在の状況(まとめ)

国立大学の第2期中期目標期間(H22-H27年)がまもなく完了を迎え、H28年度からの第3期へとバトンタッチされます。
第2期中期目標期間では、特に後半3年間の「ミッションの再定義」を巡って、国立大学から人文系学部を閉め出すかのような強い疑念を生み、この件については現文科大臣が即座に否定しましたけれども、これからの国立大学はどうなってしまうのかと、社会的にもかなりの反響があったように思います。
ミッションの再定義について、これは私見ですが、たしかに国立大学が何の方向性も持たないまま運営され、研究者のサロンのようなものになってしまうのは望ましくないとは思いますが、各国立大学が提出した「ミッション」を読む限り、これは極めて事務的な作文だと思いました。

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さて、同じく「ミッションの再定義」で槍玉に上げられたのが国立大学教育学部の「ゼロ免課程」です。ゼロ免というのは教員免許の取得を目的としないという意味ですが、なぜそのようなものが教育学部の中に存在しているのか、その点について歴史的背景をまとめてまいります。

教育学部の成り立ちについては戦後の新制大学設置に遡るのですが、一府県一大学の実現を図るという「国立大学設置の11原則」のもと、教育学部についても「1県1教員養成系学部体制」で全国に広がっていきました。なお、1県1教員養成系学部体制は2001年11月に「国立の教員養成系大学学部の在り方に関する懇談会」がまとめた報告の中で見直し(転換)が提言されています。

国立の教員養成大学・学部は、昭和24(1949)年の新制大学発足と同時に「各都道府県には教養教育と教員養成目的の学部等をおく」という基本方針(国立大学設置の11原則)の下、全国に設置されてきた。
(旺文社教育情報センター「国立大学改革を巡る動き!」

ところが、高度経済成長が終わりを告げた1973年をピークに、我が国は少子化へと向かっていきます。職業としての教員のニーズが漸減し、新規採用が抑えられる時期が長く続きました。
教員採用の圧縮は教育学部にとっては出口問題として顕在化し、常識的に考えれば定員圧縮が図られるべきなのですが、以下のような事情からそれが困難でした。

1) 新制大学を設置する際、国立大学は師範学校を組み入れた
2) 大学にとって定員減は補助金の削減につながる
3) 新学部への定員の振り替えはコスト増を嫌う文科省が認めない

3) について少し説明を加えておくと、リベラルアーツ系の学部(人間科学部など)を設置することで、教育学部の学生定員と専任教員をそちらに振り替えるということを大学側が画策するのですが、それを文科省が認めないという意味です。
新学部の設置が認められないなら他学部に定員を振り替えればいいのでは?と思われる方もおられるかもしれませんが、それでは教育学部の教員が余ってしまい、振り替え先の学部では教員が足りなくなるため解決策にはなりません。教育学部の教員を法学部や経済学部に移しても教えられる授業科目がありません。言い方は悪いですが、リベラルアーツ系の教育組織でなければ、教育学部の教員の受け皿にならないのです。

そこで考えられた妥協策が、「教育学部内に教員免許の取得を要件としないリベラルアーツ系の学科・課程を設置する」ということであり、これが俗にゼロ免課程と呼ばれるものなのです。この方法であれば、大学にとっては定員数を変えないまま入学者を維持することができ、文科省にとってもコスト増にはなりません。一挙両得ということで、1987年に山梨大学と愛知教育大学で最初のゼロ免課程が設置されました(どちらも「総合科学課程」という名称でした)。

少子化という抗いようのない時代の変化の中で、誰も損をしない方法として生まれたのがゼロ免課程であり、そこには教育的な理念やポリシーなど存在しません。国立大学改革が進められる中で当然に見直されるべき組織だとは思いますが、教育組織の改編には必ず教員人事の問題がネックとなり、時既に遅しにならないかと心配ではあります。

最後に、現在の教育学部の学生たちがどのくらい教職に就いているかというデータを文科省が公開しました。詳細はリンク先を参照いただきたいのですが、鳴門教育大学の89.1%を筆頭に、平均で68.7%の学生が大学卒業後に教壇に立っているようです(平成27年3月卒業者)。

国立の教員養成大学・学部(教員養成課程)の平成27年3月卒業者の就職状況等について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/01/1366495.htm
(資料1)国立の教員養成大学・学部(教員養成課程)の平成27年3月卒業者の就職状況

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大学入試改革における記述式問題の採点時間の試算がしめされる

2020年に予定される大学入試改革については実施上の重要な課題を残しておりますが、1月29日に開催された高大接続システム改革会議(第10回)において記述式問題の採点に要する日数の試算が公開されました。

高大接続システム改革会議(第10回)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/033/shiryo/1366526.htm

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採点日数の試算に係る前提条件

試算の前提として、受験者数53万人に対して1日あたり800名の採点者を確保し、2名チェック体制で採点することが示されています。また、答案は事前にOCRにより類似答案ごとにソートしておき、採点者は同じ採点ポイントだけを繰り返し採点するという方法により効率化と均質化を図るとされています。

試算1:設問1題ごとの採点日数

設問1題ごとの採点日数については、数学において数式を記述する問題であれば1日、国語では最大でも7日程度となる見込み。

各設問ごとの採点にかかる日数(試算)
数式などを記述させる問題 1日程度
国語: 40字×4条件 3日程度 A’
国語: 40字×4条件 3日程度 A’
国語: 80字×6条件 4日程度
国語: 200字×8条件 6日程度 P’
国語: 300字×10条件 7日程度

試算2:記述式問題を複数出題した場合の採点日数および事前事後の事務処理に係る日数

今回示された試算の中では、最も短い場合で採点に10日(事務処理に+10~15日)、最も長い場合で採点に30日(事務処理に+20~30日)となっています。すなわち、最長の場合では、試験実施から成績を提供するまでに2ヶ月近くかかるということになります。

各パターンごとの採点にかかる日数(試算) 採点の事前・事後にかかる日数(試算)
パターンⅠ 数式などを記述させる問題3問+短文記述式(A+B) = 10日程度 +10~15日
パターンⅡ 短文記述式(A+A’+B) = 10日程度 +10~15日
パターンⅢ 短文記述式(A+A’+B)×2 = 20日程度 +15~20日
パターンⅣ 短文記述式(A+A’+B+B’)+より文字数の多い記述式(P+P’)= 30日程度 +20~30日

今回示された試算に対して懸念することは次の2点です。すなわち、①実際に53万人分の答案を採点にかけたときに試算通りに進捗するのか、さらに、②1日あたり800名の採点要員はどこから確保するのか、という問題です。
①については、試算のために用意した答案と、実際の答案とは別モノだということを指摘しておきたいと思います。「消えた年金問題」のときに日本年金機構が行ったチェック作業もそうでしたが、人海戦術でチェック作業に臨んでいくと、あちこちで課題が紛糾するものです。大学入試は過密日程で行われますから、仮に採点完了が1日でもズレれば大問題となります。
②の採点要員の確保については、おそらく民間事業者に委託する(非正規労働者が採点にあたる)ことになるでしょう。これが非常に不安なところです。文科省は「2名チェック体制だから不備や不正を防げる」と考えているのでしょうが、タイムリミットに追われて作業をするとダブルチェックはあまり機能しません。作業が遅れれば遅れるほど、現場では「正確性よりもスピードが正義」という雰囲気に陥ります。

私見としては、このようなリスクや負担を負ってまで、センター試験レベルの共通テストで記述式問題を出題するメリットは少ないと思います。というのも、記述式問題への配点が2割程度であれば、記述式問題だけで大幅な点数の逆転は起こらないだろうと考えるからです(成績を10点刻みで評価するなら尚更です)。
大切なことは、何のために記述式問題を出題するのかということです。「総合的学力を持っているが知識を問うテストには弱い」高校生が番狂わせを起こせるようなものにならなければ、記述式問題を出題する意味がありません。記述式問題を出題する場合としない場合とで、結果にどの程度の違いが生じるのか、実際に高校生の協力を得て模擬試験を実施してみてはいかがでしょうか。
「いやいや、学習指導要領と歩調を合わせての入試制度改革なんだよ(だから試験結果が変わらなくとも記述式問題が出題されることが大切)」と言う人もいるかもしれませんが、そうであれば各大学の個別入試で3次試験を実施する方がより効果的かつ負担は少ないと思われます。

ネガティブキャンペーンを展開するつもりはないのですが、就職解禁時期を巡って大学3・4年生を振り回す経団連のように、どうも2020年には高校生が右往左往する事態にならないか心配でならないのです。

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