司法試験1500人に半減に涙目

つい先日、法科大学院についての記事(法科大学院の行く末に思う、大学の失敗)を書いてみたけれど、何の偶然か政府が司法試験合格者数を絞ると発表した。場当たり的政策とはこのことか、とりあえず報道の中身を検証していきたい。例によってご関心があれば続きをお読みあれ。


ネタ元としては読売新聞を引用させていただく。
司法試験「合格1500人」に半減…政府目標案
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150521-OYT1T50066.html

政府は21日、司法試験の合格者を「年1500人以上」とする案をまとめた。
7月までに法相や文部科学相ら6閣僚による「法曹養成制度改革推進会議」で政府方針として正式決定する見通しで、司法制度改革で「3000人程度」とされた政府目標は事実上、半減する。9月に合格発表がある今年の司法試験から決定を踏まえて合格者数が決められる。法曹人口の大幅増を掲げた改革は大きく転換することになった。

いきなり飛び込んできた、司法試験合格者半減=1500人程度というニュース。
3000人という当初目標を一度も達成できないまま、目標を1500人に半減させるという。

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今回報道されたのは政府の方針であり、正式には7月までに開催される法曹養成制度改革推進会議で決定されるらしい。ちなみに、6閣僚とは内閣官房長官(議長)、法務大臣及び文部科学大臣(副議長)、総務大臣、財務大臣及び経済産業大臣(議員)のこと。
驚くべきは合格者半減の実施時期。いきなり、この9月の合格発表から適用されると!法科大学院生にとっては死活問題とも言える重要事項が、なんの移行期間も設けられないまま即実行されるとは。少なくとも在学生が受験資格を失う年度から適用とか、なんらか常識的な配慮が必要なはず。この適用時期だけでも正式決定までに再考してほしいところ。

政府は2002年、従来は1000人程度だった司法試験合格者を「10年頃までに年3000人程度に増やす」との目標を閣議決定した。しかし74校が乱立した法科大学院の学生の質が疑問視され、弁護士の就職難も問題となる中で、合格者数は08年の2209人をピークに頭打ちとなり、目標は13年7月に撤回された。

誤算なのか確信犯なのか知らんけど、法科大学院卒業者の質の低下が非常に問題。平成26年度の短答試験合格率は、予備試験合格組を除くと62%。法科大学院を卒業しても短答試験にすら合格できない者が多い。しかも、この短答合格率は、法科大学院の全修了生が受験してのものではない。平成26年度までは受験回数の制限(3回)があるため、学力不足を自覚する修了生が受験を控える「受け控え」の問題があるからだ。仮に全修了生が司法試験を受験したとしたら、短答合格率はさらに下がるだろう。
一方で、予備試験組は平成26年度、受験者244名中、243名が短答試験に合格(合格率99.5%)し、163名が最終合格を果たしている。
正規の法曹教育を受けていない者の方が、法科大学院修了者よりも圧倒的に成果を残している。この揺るぎない事実が、法科大学院へのレッドカードを突きつけている。
法科大学院修了者の能力に疑問符がつけば、新司法試験及び法曹全体への信頼が損なわれ、彼らの就職先や法曹ニーズも失われていく。

その後、政府は内閣官房の法曹養成制度改革推進室で新たな合格者数の目安を検討。有識者でつくる「法曹養成制度改革顧問会議」の意見を聞きながら、法曹の需要の調査などを進めた。その結果、企業内弁護士の人数が10年間で約10倍になるなど新たなニーズもあり、現在は約4万1000人の法曹人口を一定程度増やす必要があるとの結論に至った。
ただ、仮に合格者数を2000人に定めると6年後に5万人、13年後には6万人と大幅に増加する。そこで、現行の司法試験が始まる直前の05年頃の約1500人を最低ラインに設定。毎年1500人でも9年後には5万人に到達する。

企業内弁護士が10年で10倍って・・・この根拠は大丈夫なのだろうか。日本組織内弁護士協会の資料によれば、確かに2004年の109名から2014年の1179名へと10年間で10倍に増えているけど、新司法試験合格組のデビューって2008年じゃないのか?つまり、2006年の第1回新試験に合格し、その年の11月から1年間の司法修習を受けたら、弁護士デビューは2008年になるということ。さらに言えば、企業内弁護士のうち新司法試験合格組の割合はどうなのだろうか?政府がどのようなソロバンで試算しているのか、素人目にも不安になる。
法科大学院については定員割れだとか司法試験の合格者数ばかり注目されるけど、法科大学院教育のシステム、すなわち、法律知識ゼロの人間が受験指導歴ゼロの教員により、3年間で93単位(法令上の最低条件)も取らされつつ、せめて短答試験くらいは合格する程度の知識を得て修了していく、というシナリオに無理がある。よほど地頭が良ければ別だけど、定員割れの法科大学院は千客万来状態で、頭の中身より頭数が重要になってしまっている。
この本質的な問題にメスを入れない限り、合格者数をコントロールするだけで法曹養成制度の泥沼に光がさすのだろうか。甚だ疑問だ。
という感じでつらつら書きつつ、次回もよろしくお願いします。

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