県立相模原高校に学ぶ「1.01の法則」

今年の甲子園県予選では早稲田実業の清宮君が大ブレイクしているが、激戦区神奈川では県立相模原(通称ケンソウ)の躍進に地元住民が熱狂した。県立相模原は早慶にのべ90名(27年度)が合格する県下有数の進学校でありながら、今年の県予選では甲子園常連校を抑えて第一シードに選出されている。文武両道を地で行くケンソウ野球部からは、我々社会人もまことに学ぶべき点が多く、それが本日のお題。例によってご関心があれば続きをお読みあれ。


今回のネタ元はこちら。
『1.01の法則』『PDCAサイクル』でレベルアップ 県内有数の進学校・相模原が歩む道
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150724-00010000-baseballc-base

さっそく、記事から引用しつつ、県立相模原のノウハウを検証していこう。

三塁側のベンチにはホワイトボードが常設され、65人の部員全員の名前の横に身長と体重、そして2週間でそれぞれが克服すべき短期目標がぎっしりと書き込まれている。
「それらを『PDCAサイクル』で繰り返して、選手個々がそれぞれの力をアップさせているんです」

いまや大学業界で『PDCAサイクル』を経営に導入しない大学は少数ではないだろうか。大学全体の目標を掲げ、さらには学部ごとの目標や計画を設定し、教職員それぞれが目標の達成に向けて取り組むという基本構造は、おそらくどの大学でも共通かと思われる。
しかし、この「もっともらしい」改善の手法が、イマイチ機能しないのもまた事実なのだ。その主な原因として、つぎの2点は見逃すことができない。
第一に、現状把握が曖昧なため、適切な目標を設定できていないこと。現状とはすなわち出発地点のことであり、目標とはゴール地点である。到達可能なゴール地点を設定するためには、現状(出発地点)を正確かつ具体的に把握することが必要不可欠だ。残念なことに、大学は現状把握がとりわけ苦手であり、最近ではIR(institutional research)という得体の知れないキーワードが脚光を浴びている。IRについては別の機会に触れたいと思う。県立相模原がホワイトボードに一覧化している伸長・体重とは、まさに現状把握そのものであり、それ無くして目標設定など成立しないのだ。(もちろん、伸長・体重だけでなく、ベースランニングや遠投の距離など、細かくデータ管理しているであろう)
第二の問題として、3年~5年という長期の目標設定は、PDCAサイクルに向かないということだ。大学は基本的に1年間の学年暦と4年間の教育課程が学校運営のベースとなっている。このため、大学や学部の目標を設定する際、3年から5年程度の長期的な目標となる傾向がある。長期目標をたてること自体は悪くないのだが、目標が長期になればなるほど、実現可能性は低くなる。また、ゴールまでの期間が長くなるほど、Checkの対象とすべき事象も膨大になる。こうした問題点を無視して無理矢理にPDCAサイクルを回そうとすれば、半月も経たずして形骸化は避けられないだろう。
大学業界にはPDCAサイクルを正露丸のような万能薬だと信じている人が本当に多いと思うけど、課題改善の手法は各人が置かれた状況により自ら考案するのが本来の姿ではなかろうか。

ホワイトボードには『PDCAサイクル』の他にもさまざまな言葉が書き込まれている。そのなかでも、県内有数の進学校でもあることを感じさせるのが『1.01の法則』と『0.99の法則』だ。
ともに日々積み重ねる努力に関したもので、前者は「前の日よりも1%ずつ努力していけば、1年で『1.01の365乗=37.8』と大きな力になる」と、後者は「逆に少しずつさぼれば、1年で『0.99の365乗=0.03』とやがて力がなくなる」と説いている。

『1.01の法則』も『0.99の法則』も初耳だけど、なるほど分かりやすいスローガンだと思った。毎日1%の努力でよいのなら、練習を終える前にもう10回だけバットを振ろうという意欲につながる。実際、その積み重ねの有無が、年単位では大きな違いになるのだと思う。
ここで大切なのは、この1%の努力とは、PDCA達成のための努力とは別枠だということだろう。強豪私学を倒して甲子園を目指すのだから、求められる努力は1%どころではない。最低限必要な努力をしたうえで、さらにもう1%努力せよということだ。
もちろん高校球児のフィジカルなトレーニングと大学職員の事務仕事では「努力」の形態は同じではないけれど、あと一歩前に足を踏み出す仕掛け作りはとても大切。
今回は高校野球を題材にしてみたが、元スワローズの野村監督の「野村ノート」が有名なように、野球界における分析や知略の数々には本当に舌を巻く。学校経営の世界に、これほどの策士がはたして存在するだろうか。
という感じでつらつら書きつつ、次回もよろしくお願いします。

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