これからの「実学」の話をしよう

先日の記事(「即戦力?」な職業教育学校に非難轟々)とも少し関係するけど、大学業界における昨今のトレンドとして、実学志向の高まりを強く感じる。日経新聞でも「普通の学生には実学重視」「G型10校で十分」などという見出しがデカデカと付けられ、要するに学問やるのはせいぜい早慶上智くらいまでで、それより下は手に職つけろ的な考え方が国策レベルで進んでいる。そういうわけで今回のテーマは、そもそも実学ってナンだ?というお話。例によってご関心があれば続きをお読みあれ。


実学について考察していく前に、世間一般で通用している実学の定義について確認しておきたい。ベタだけどウィキペディアから抜粋。

実学(じつがく)とは
一般には、空理空論でない実践・実理の学のこと。虚学の対立語。
実際生活に役立つ学問のこと。工学・医学・農学・法律学・経営学などを指すことが多い。より狭義には、応用科学を指す。(以下省略)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9F%E5%AD%A6

さて、ウィキペディアから引用はしたものの、なんとも薄っぺらい説明。どうやら「実学」に関する国民間の共通理解、すなわち世論は形成されていない様子。にも関わらず、国も大学も実学実学と喧伝している、なんとも気持ちの悪い状態。
上記の定義では、実学とは「空理空論でない実践・実理の学のこと。虚学の対立語。」とあるけど、そもそも文科省が空理空論の教育課程を認可するはずがなく、大学教育における実学を虚学の対義語として理解することは困難。
また、実学を「実際生活に役立つ学問」だとすると、既存の学問体系に実際生活を分類する必要が生じ、その作業自体がむしろ実際生活とは乖離したものに思われる。すなわち、実学を学問の一種と考えることも困難かと。
さらに興味深いことに、英語には「実学」という言葉が存在しない。辞書では「practical science」と翻訳されているが、これは応用科学のことであり、我々が実学的だと思っているもの、例えば簿記や測量などを意味する言葉ではない。
このことから「実学」とは、我々日本人が何らかの理由により、学問領域の周辺に後天的に創造した学びではないかということが推測される。何らかの理由が就職難や教育のマス化による学力低下であることは想像に容易いが、これらの問題解決を「実学」に求めるとするならば、なんとも貧困な教育観ではないだろうか。
タイトルに掲げたサンデル先生のパクリのような本題に戻ると、そもそも「実学」にこれからなど無い。いまだ言葉の定義すら百家争鳴の段階であるが、そもそも定義する価値すら感じない。「実学」とは貧困な教育観による苦し紛れの処方箋であり、100年後に残るような言葉ではなかろう。
どうしても大学の方針で実学志向を打ち出さざるをえないなら、このことを理解したうえで、「実学とは?」などという不毛な泥沼に嵌ることをせず、可能な限り学問的要素を排除したプログラムを提供することが、学生のためではないかと思われる。そういう大学に限って、「教養教育の充実」などという実学志向とは矛盾した宣伝文句で高校生を釣ってたりしそうw
という感じでつらつら書きつつ、次回もよろしくお願いします。

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