教育学部におけるゼロ免課程の成り立ちと現在の状況(まとめ)

国立大学の第2期中期目標期間(H22-H27年)がまもなく完了を迎え、H28年度からの第3期へとバトンタッチされます。
第2期中期目標期間では、特に後半3年間の「ミッションの再定義」を巡って、国立大学から人文系学部を閉め出すかのような強い疑念を生み、この件については現文科大臣が即座に否定しましたけれども、これからの国立大学はどうなってしまうのかと、社会的にもかなりの反響があったように思います。
ミッションの再定義について、これは私見ですが、たしかに国立大学が何の方向性も持たないまま運営され、研究者のサロンのようなものになってしまうのは望ましくないとは思いますが、各国立大学が提出した「ミッション」を読む限り、これは極めて事務的な作文だと思いました。

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さて、同じく「ミッションの再定義」で槍玉に上げられたのが国立大学教育学部の「ゼロ免課程」です。ゼロ免というのは教員免許の取得を目的としないという意味ですが、なぜそのようなものが教育学部の中に存在しているのか、その点について歴史的背景をまとめてまいります。

教育学部の成り立ちについては戦後の新制大学設置に遡るのですが、一府県一大学の実現を図るという「国立大学設置の11原則」のもと、教育学部についても「1県1教員養成系学部体制」で全国に広がっていきました。なお、1県1教員養成系学部体制は2001年11月に「国立の教員養成系大学学部の在り方に関する懇談会」がまとめた報告の中で見直し(転換)が提言されています。

国立の教員養成大学・学部は、昭和24(1949)年の新制大学発足と同時に「各都道府県には教養教育と教員養成目的の学部等をおく」という基本方針(国立大学設置の11原則)の下、全国に設置されてきた。
(旺文社教育情報センター「国立大学改革を巡る動き!」

ところが、高度経済成長が終わりを告げた1973年をピークに、我が国は少子化へと向かっていきます。職業としての教員のニーズが漸減し、新規採用が抑えられる時期が長く続きました。
教員採用の圧縮は教育学部にとっては出口問題として顕在化し、常識的に考えれば定員圧縮が図られるべきなのですが、以下のような事情からそれが困難でした。

1) 新制大学を設置する際、国立大学は師範学校を組み入れた
2) 大学にとって定員減は補助金の削減につながる
3) 新学部への定員の振り替えはコスト増を嫌う文科省が認めない

3) について少し説明を加えておくと、リベラルアーツ系の学部(人間科学部など)を設置することで、教育学部の学生定員と専任教員をそちらに振り替えるということを大学側が画策するのですが、それを文科省が認めないという意味です。
新学部の設置が認められないなら他学部に定員を振り替えればいいのでは?と思われる方もおられるかもしれませんが、それでは教育学部の教員が余ってしまい、振り替え先の学部では教員が足りなくなるため解決策にはなりません。教育学部の教員を法学部や経済学部に移しても教えられる授業科目がありません。言い方は悪いですが、リベラルアーツ系の教育組織でなければ、教育学部の教員の受け皿にならないのです。

そこで考えられた妥協策が、「教育学部内に教員免許の取得を要件としないリベラルアーツ系の学科・課程を設置する」ということであり、これが俗にゼロ免課程と呼ばれるものなのです。この方法であれば、大学にとっては定員数を変えないまま入学者を維持することができ、文科省にとってもコスト増にはなりません。一挙両得ということで、1987年に山梨大学と愛知教育大学で最初のゼロ免課程が設置されました(どちらも「総合科学課程」という名称でした)。

少子化という抗いようのない時代の変化の中で、誰も損をしない方法として生まれたのがゼロ免課程であり、そこには教育的な理念やポリシーなど存在しません。国立大学改革が進められる中で当然に見直されるべき組織だとは思いますが、教育組織の改編には必ず教員人事の問題がネックとなり、時既に遅しにならないかと心配ではあります。

最後に、現在の教育学部の学生たちがどのくらい教職に就いているかというデータを文科省が公開しました。詳細はリンク先を参照いただきたいのですが、鳴門教育大学の89.1%を筆頭に、平均で68.7%の学生が大学卒業後に教壇に立っているようです(平成27年3月卒業者)。

国立の教員養成大学・学部(教員養成課程)の平成27年3月卒業者の就職状況等について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/01/1366495.htm
(資料1)国立の教員養成大学・学部(教員養成課程)の平成27年3月卒業者の就職状況

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