大学入試改革における記述式問題の採点時間の試算がしめされる

2020年に予定される大学入試改革については実施上の重要な課題を残しておりますが、1月29日に開催された高大接続システム改革会議(第10回)において記述式問題の採点に要する日数の試算が公開されました。

高大接続システム改革会議(第10回)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/033/shiryo/1366526.htm

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採点日数の試算に係る前提条件

試算の前提として、受験者数53万人に対して1日あたり800名の採点者を確保し、2名チェック体制で採点することが示されています。また、答案は事前にOCRにより類似答案ごとにソートしておき、採点者は同じ採点ポイントだけを繰り返し採点するという方法により効率化と均質化を図るとされています。

試算1:設問1題ごとの採点日数

設問1題ごとの採点日数については、数学において数式を記述する問題であれば1日、国語では最大でも7日程度となる見込み。

各設問ごとの採点にかかる日数(試算)
数式などを記述させる問題 1日程度
国語: 40字×4条件 3日程度 A’
国語: 40字×4条件 3日程度 A’
国語: 80字×6条件 4日程度
国語: 200字×8条件 6日程度 P’
国語: 300字×10条件 7日程度

試算2:記述式問題を複数出題した場合の採点日数および事前事後の事務処理に係る日数

今回示された試算の中では、最も短い場合で採点に10日(事務処理に+10~15日)、最も長い場合で採点に30日(事務処理に+20~30日)となっています。すなわち、最長の場合では、試験実施から成績を提供するまでに2ヶ月近くかかるということになります。

各パターンごとの採点にかかる日数(試算) 採点の事前・事後にかかる日数(試算)
パターンⅠ 数式などを記述させる問題3問+短文記述式(A+B) = 10日程度 +10~15日
パターンⅡ 短文記述式(A+A’+B) = 10日程度 +10~15日
パターンⅢ 短文記述式(A+A’+B)×2 = 20日程度 +15~20日
パターンⅣ 短文記述式(A+A’+B+B’)+より文字数の多い記述式(P+P’)= 30日程度 +20~30日

今回示された試算に対して懸念することは次の2点です。すなわち、①実際に53万人分の答案を採点にかけたときに試算通りに進捗するのか、さらに、②1日あたり800名の採点要員はどこから確保するのか、という問題です。
①については、試算のために用意した答案と、実際の答案とは別モノだということを指摘しておきたいと思います。「消えた年金問題」のときに日本年金機構が行ったチェック作業もそうでしたが、人海戦術でチェック作業に臨んでいくと、あちこちで課題が紛糾するものです。大学入試は過密日程で行われますから、仮に採点完了が1日でもズレれば大問題となります。
②の採点要員の確保については、おそらく民間事業者に委託する(非正規労働者が採点にあたる)ことになるでしょう。これが非常に不安なところです。文科省は「2名チェック体制だから不備や不正を防げる」と考えているのでしょうが、タイムリミットに追われて作業をするとダブルチェックはあまり機能しません。作業が遅れれば遅れるほど、現場では「正確性よりもスピードが正義」という雰囲気に陥ります。

私見としては、このようなリスクや負担を負ってまで、センター試験レベルの共通テストで記述式問題を出題するメリットは少ないと思います。というのも、記述式問題への配点が2割程度であれば、記述式問題だけで大幅な点数の逆転は起こらないだろうと考えるからです(成績を10点刻みで評価するなら尚更です)。
大切なことは、何のために記述式問題を出題するのかということです。「総合的学力を持っているが知識を問うテストには弱い」高校生が番狂わせを起こせるようなものにならなければ、記述式問題を出題する意味がありません。記述式問題を出題する場合としない場合とで、結果にどの程度の違いが生じるのか、実際に高校生の協力を得て模擬試験を実施してみてはいかがでしょうか。
「いやいや、学習指導要領と歩調を合わせての入試制度改革なんだよ(だから試験結果が変わらなくとも記述式問題が出題されることが大切)」と言う人もいるかもしれませんが、そうであれば各大学の個別入試で3次試験を実施する方がより効果的かつ負担は少ないと思われます。

ネガティブキャンペーンを展開するつもりはないのですが、就職解禁時期を巡って大学3・4年生を振り回す経団連のように、どうも2020年には高校生が右往左往する事態にならないか心配でならないのです。

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